ジャイアントペンギンの書庫

保管庫として活用、金色のコルダ3.4の東金千秋と小日向かなでの話しか置いてません·····あとは思いついた事をグダグダ書いてる今日この頃。

ウニと私と東金部長 9(最終)

『部長違う!千秋や千秋って呼べ!!』

小日向の中でこの言葉ばかりが繰り返し思い出された。
もう誤魔化せないと小日向は思う。

『もう無理、無理なん分かった。真のファイナル終わったら好きって言う・・・生涯一度きりの恋やもん後悔なんてせえへん。でも最後のアンサンブルになるかもしれへんから・・・好きな曲に変更させてもらおう・・・おやすみ千秋』

翌日、憑き物が落ちたかのような顔をした小日向がアンサンブルメンバーに真のファイナルの楽曲を変えたいと申し出た。
スコットランド幻想曲 第3楽章
離れた恋人を待つ切なくも美しい旋律の曲でソロに近い演奏、ファーストヴァイオリンの技量が問われる曲だ。

「綺麗な曲で人気もあるし・・・いいんじゃないか?」

少し元気がない様子の東金。

「・・・2日か・・・難しいですが頑張りますか?」

心配そうな芹沢。

「小日向ちゃんが弾いてみてから考えようかな?」

変更を良しとは思って無い土岐。

「分かりました」

小日向が演奏を始める・・・切なくて清らかな音色・・・草原の中で女性が一人、恋人を待ち続ける光景が見える。恋人の姿がふわっと現れた背の高い金色の髪に赤い瞳・・・女性がその恋人を想って芝生に座って泣いている姿が見える。そのイメージを取り囲むように小日向から金色のキラキラする光が溢れていく・・・圧倒的なマエストロフィールド────純粋に恋人を待つ切なくも美しい旋律が広がりそれと共に今まで以上にさらに広がる金色のキラキラした粒子・・・好きだと切なく囁かれている気がした。

「・・・小日向・・・」

「小日向さん凄いです凄いとしか表現できません」

「明日は小日向ちゃんに負けへんように演奏できるかな・・・」

その後は皆してアンサンブルの練習に没頭し、気付くと夕方になっていた。
芹沢、土岐は用事があると二人して街の方に行き、東金が小日向と共に寮に帰ることにした。

「───参ったね・・・すごいねあの小日向ちゃんのキラキラには・・・千秋好き好き言ってうるさいくらいやったわ・・・」

「・・・開き直った小日向さんって怖いなと思いました・・・あれが100パーセントの小日向さんなんですか?冥加が執着するはずです・・・」

夕暮れの中、小日向と一緒に帰る。

「・・・小日向・・・明日、演奏が終わったら話したい事があるんだ」

「私も千秋に話したい事があるねん・・・東金部長じゃなくて千秋に・・・ええかな?」

真っ赤な顔で菩提樹寮の玄関前で立ち止まり東金を見つめる小日向にドキリとした。
───東金部長じゃなくて千秋に・・・

「・・・今日の演奏で分からんかった?もう自分を誤魔化したり・・・逃げたりするんはやめてん東金部長じゃなくて、千秋自身に話があって・・・極端な話、千秋がヴァイオリンやっててもやってなくても・・・この気持ちは変わらへん気ぃする」

「かなで・・・明日、話は明日するけど・・・キスしたい・・・」

「・・・えっ・・・千秋のあほ・・・・・・そんなん聞いたらあかん・・・いいに決まってるし」

「かなで・・・」

「やっぱりダメ!玄関やんここ・・・部屋に来て・・・早よして」

手を引っ張られて女子寮の方に連れていかれた。
女子寮は2人しかいないので誰にも見つからずに入れた。防犯上大丈夫なのか?と心配になったがそのおかげで自分も入れたんだし・・・
部屋に入ると小日向が抱きついてきた・・・可愛い・・・背中に手を回し俺からも抱きしめる・・・しばらく小さくて華奢な身体を抱きしめていたが、小日向の顔を両手で包み込むように少し上を向けさせてそっとキスした。
緊張した小日向が可愛い・・・その後、啄むように何回も軽めのキスをして最後に深いキスをした。
小日向の身体から力が抜けていく・・・目が潤んで蕩けそうな表情・・・身体を支えるようにしベットに座らせ抱きしめた。

「・・・大丈夫か?」

「・・・キスって・・・チュッて感じやないのん・・・」

「悪い・・・我慢できんかった・・・俺な、誰とも付き合った事ないし、下手やったら・・・ごめん」

「私も無いもん・・・絶対、上級者のキスや・・・もう無理、歩かれへん千秋のせいやもん」

その後、拗ねる小日向に食事を寮の部屋まで運び久しぶりに穏やかに二人で話した。
部屋を去る際に、

「もう一回して」

とキスを強請られて本気で襲いそうになりヤバかった・・・素直な小日向は可愛すぎて、自分の自制心がいつまで続くか自信がなくなった。
菩提樹寮の共有スペースでぼーっとしてると 土岐が来て・・・

「小日向ちゃんお疲れやったん?ご飯食べに来られへんかったし・・・今も部屋から出て来ぇへんやん?ケンカしたん?」

心底、心配している土岐。

「・・・キスした・・・めっちゃ可愛かった・・・」

「・・・えっいきなり!とりあえず、おめでとうさん・・・で告白は?」

「・・・明日、する・・・」

「・・・順番間違ってへんか?千秋」

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真のファイナル当日───
夕方にファイナルは開幕なのでギリギリまで練習をする。
出来栄えは2日で仕上げたとは思えない仕上がりだ。
昨日、キスをしてから自分に余裕が出来た気がする。
男って単純だ。
告白は今晩の予定だが・・・
練習する度に小日向が音で東金に好きだと言われてる気がして・・・少し気恥しいがここまで好きと言われたら自信がつかないはずは無い。
真のファイナルには小日向に神南高校への転校を勧めてくれた長野のヴァイオリン先生、小日向の祖父、東金の父も聞きに来た。
東金の父は小日向のヴァイオリンを聞けることが嬉しいらしく・・・年甲斐もなくそわそわしていて誰が見ても恥ずかしいくらいの小日向の熱狂的なファンだ。
小日向の祖父は相変わらず恐ろしい雰囲気を纏い見に来た・・・とてもマイスターには見えない・・・ヤクザの親分みたいだ。
小日向がおじいちゃん!と走り寄ったのを見て部員の皆が驚いたのは当然の反応だ。とても血縁関係があるようには見えない。小日向は祖母に生き写しらしい・・・祖父の溺愛の理由が分かった。
真のファイナルの開幕だ────
最初は星奏学院からの演奏だ。
星奏学院は律を中心に安定した演奏ださすがオケ部があるだけに完全なるハーモニーだ・・・
次は神南、曲はスコットランド幻想曲 第3楽章 。
故郷で恋人を待つ切ない民謡をベースに作られた曲だ。
小日向の純粋で真っ直ぐな恋心がそのまま演奏で表現された。
綺麗だ・・・音が透明でキラキラしていて・・・綺麗だけでなく恋する事の切なさ、戸惑い、辛さ・・・でも愛おしくてならないという気持ちを小日向の金色のキラキラした粒子のマエストロフィールドが会場全体に広がる・・・愛おしい恋人を待ち続ける女性とその恋人の幻影が見える・・・こんなに曲のイメージがはっきりと見えるマエストロフィールドは見たことがない。
ファイナルの時の比ではない聴いている人、全てが小日向の恋に酔いしれているようだ・・・中には涙する人も、恋してみたいとため息をつく人、心が洗われる人、それぞれが小日向の音に魅せられている。
真のファイナルが終わった・・・
勝者は星奏学院でもなく神南でもなく、小日向だろう。
最後には星奏学院、神南高校全ての部員による演奏「愛の挨拶」で締めくくられた。
その夜に祝賀会が行われ皆が歓談する中、抜け出し庭に待つ小日向を追う。
小日向は待ちかねていたように俺を見つけて駆け寄って来た。

「かなで・・・待ったか?」

「ううん、待ってへんよ・・・もう千秋って呼んでもええかな?」

「ええで、夏が終わったら引退やし。進学もほぼ決まってるしな」

小日向がぎゅっと抱きついてきた・・・東金も抱きしめる。
素直な小日向はちょっと大胆な気がする。

「・・・かなで、いざとなると気の利いた言葉って出ないもんやな・・・お前の事が好きや。俺をお前のただひとりの特別な存在にしてくれへんか?俺とずっと一緒にいて欲しい・・・お前の気にしてる家なんて捨てても構わない」

「・・・私も千秋が好き・・・大好き・・・家捨てたら、うちの家に住んだらいいやん?私、節約レシピ得意やし大学卒業したら働く・・・千秋ぐらい養ったるもん」

「・・・俺、資産運用してるん知ってるやろ?結構、稼いでるから養ったるのは俺やで?」

「・・・そうなん?だったら早よあの家出て・・・あんなお城みたいな家、落ち着けへんし・・・私、千秋以外は要らんから・・・」

「・・・かなで・・・」

そっと顎を持ち上げキスをした。

その後、二人寄り添い会場に戻るとニヤニヤしながら土岐が近づいてきた。

「・・・やっとくっついたん?長かったわ~ほんまに良かったわ・・・これで千秋のヤキモチも減って部内も平和やね」

背後の男子部員達が激しく頷いている・・・口々に・・・

「部長・・・怖かった・・・小日向さんにうっかり話しかけられなかったし」

「小日向さんにアドバイス求めようとしたら部長に説教まがいのアドバイスされるし・・・」

「・・・とにかく小日向さんに近づくと寿命が縮む思いでした!」

───芹沢が頭を振りながら

「次期、副部長予定なのに他の部員が話しかけられないなんて・・・心の狭い彼氏には困ったものです」

視線を逸らす東金。

「私・・・季節外れに転校してきてアンサンブルメンバーに選ばれたから・・・みんなに疎まれてると思ってた・・・のに」

「・・・そんな事はありません。神南の管弦楽部は実力主義なので、原因はそこの嫉妬深い彼氏のせいです」

「・・・東金部長の馬鹿・・・しばらく晩御飯作らないから・・・」

「かなで!東金部長はやめるって・・・悪かったから晩御飯抜きとよそよそしく話すのはやめてくれ・・・」

「知らないです・・・」

ぷいとそっぽ向き、その態度に慌てる東金に部員達が肩を震わせ笑いをこらえている。
神戸に帰るまで小日向のよそよそしい態度と東金部長呼びは続いた。
神戸に帰り、小日向の家に入って・・・

「・・・男子部員全員が知ってたなんて恥ずかしすぎるやん・・・千秋のあほ・・・」

と言われ・・・たいして怒ってなくて、よそよそしい態度は照れがほとんどと分かって安心した。
その後はいつも通りに小日向の手料理を食べて最後にはキスをして叔父のアパートに帰ろうとすると・・・服の裾を引っ張りながら小日向が・・・

「千秋、帰ったらいや・・・泊まっていって・・・」

「明日から新学期やからな?泊まったら・・・泊まるだけで済まへんからな」

「・・・うん・・・ごめん・・・ちょっと寂しかっただけ・・・」

最後に軽めのキスをし小日向を宥めて、東金が玄関から外に出ると、猫が・・・ウニとフィンが二匹並んで待っていた。

「なんやお前ら久しぶりやな?元気にしてたか?」

ウニャ・・・
『最近見なかったけど・・・』
ニャウ?
『かなでちゃんとは?』

「お前ら相変わらず仲良いよな・・・でも俺も小日向の彼氏に昇格したんやで」

ニャ!
『えっ!やったな!』
ウニャニャン!
『かなでちゃんと!良かった~』

「・・・なんや喜んでくれてるみたいやな」

季節は夏が終わり秋になる・・・まだまだ残暑厳しいが、この夏にたった一つの大切な存在を得た事を幸運に思う。

「・・・とりあえず、かなでの爺さんに挨拶して結婚前提でのお付き合いの許し貰わなな・・・俺、あいつ以外は無理やし・・・」

まだまだ不安要素はあるが二人一緒ならなんとかなるさと東金は思った。


おわり