ジャイアントペンギンの書庫

保管庫として活用、金色のコルダ3.4の東金千秋と小日向かなでの話しか置いてません·····あとは思いついた事をグダグダ書いてる今日この頃。

巨大な猫を飼い慣らす女の子6

   真のファイナルの曲はバッハ  2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043第一楽章に決まった。

   小日向の希望だ、東金部長と一緒に弾いてみたかったんです・・・と真っ赤な顔で目線を逸らして言われた・・・。早く慣れてくれ・・・

   一番心配していた、演奏に影響しないかという点は問題なかった。

   演奏に入ると視線を交わす暇もない曲なのが幸いした。後は・・・マエストロフィールドがどんな風に花開くかだが・・・全く想像つかない。

本番を楽しみにしよう。

   問題は・・・演奏以外の私生活部分だ。本当に参る・・・以前までは目を合わせて話しながら食事したりしてたのに・・・今は目線を逸らされる・・・し、近づくと逃げられる・・・彼氏彼女の関係であんまりだ。

   好き過ぎて恥ずかしくて逃げられるなんて・・・怒るに怒れない。

   とりあえず今日は隣に座って夕食を一緒に食べるという課題を小日向に命じた。正面だと目が合うからだ。

「・・・お前らおかしくないか?」

   響也が突っ込むのも不思議じゃない状況・・・むしろ律、大地、ニアはよくぞ突っ込んでくれたと心の中で拍手した。

   小日向は真っ赤な顔で目を瞑る東金にご飯を食べさせている。いわゆる「アーンして?」をずっとしている・・・。

「うるさい一種のリハビリだ」

   目を瞑りながら東金が得意気に言った。

「東金・・・精神的攻撃を仕掛けてうちの闘争心を削るとか?作戦か?!姑息な・・・」

「・・・いや~千秋は真剣に困っとうから許したってな?それもこれも小日向ちゃんが千秋の事好き過ぎて目も合わされへんようになってしもたから・・・リハビリが一番近いんかな・・・」

「響也・・・私も真剣なの!昨日の朝までは普通に大丈夫だったんだけど・・・好きって自覚したら恥ずかしくなって・・・慣れるまで我慢して・・・ください星奏学院の皆さん」

   こっくりと響也、律、大地、ニアは頷くしかなかった。

   翌日も練習とリハビリが続く、今日は手を繋ぐミッションだ。

身長差があるので視線を交わさなければこれはわりと大丈夫だった。

   東金は最初は悩んでいたがリハビリという大義名分の名の元に大っぴらにイチャつける事に気付いたので今の状況を楽しんでいた。昨日の皆の前で食事を食べさせて貰ったし・・・今日は終日、手繋ぎしたり肩を抱いたり腕を組んだり・・・明日は何してもらおうかな・・・

   ファイナル前日だから練習はもちろんする。

   そうだ!勝ったら沖縄に二人で行こう。

ファイナル前日──── 

   東金はいつになく真剣だ。

   真のファイナルに勝ったらリハビリ目的で沖縄に連れて行くという計画を思い付いたからだ。

   土岐は『千秋燃えとうね~』と芹沢は『さすがです僕も見習わないと』と感心していた。

   東金の計画を知らない小日向は『真剣な東金部長ってカッコイイ私も頑張ろ!』と惚れ直していた。

   最後の調整を済ませた後にちょっとぐらいいいよな?という軽い気持ちで東金が背後から小日向を抱きしめた。

   ビクッと固まる小日向・・・緊張してる可愛ええなとか思いながら、

「明日の演奏楽しみだな・・・勝つのは俺たちだけどな」

「はっはい。明日は頑張ります・・・それと東金部長のハグはやっぱり好き・・・」

「・・・キスは?」

「・・・・・・・・・好き」

「ファイナル終わったらキスな?今したら死にそうやな?」

「うん。こんな女の子みたいなの自分じゃないみたいで恥ずかしい」

「いつもみたいにハキハキ言うお前も好きやし今みたいに可愛ええお前もどっちも好きや・・・2種類楽しめてお得やな」

「東金部長も標準語と関西弁2種類だよね?私もどっちも好き」

「やっぱり今、キスしていいか?」

「えっ!う・・・うん」

   ガチガチに固まっている小日向の背後から頬に軽くキスした。

「今日はこれだけな?」

 

   そっか・・・東金部長はどっちも好きなんだ・・・正直、自分の方が戸惑っていた。だって顔見ちゃうとこう心臓の辺りがきゅ─んってなって・・・ぎゅっと抱きついたりしたくなる衝動になり・・・そんなの自分じゃないみたいで恥ずかしくて逃げ出していた。

   東金部長が嫌いじゃないなら二人きりの時は甘えたりしても・・・でも甘え方なんて知らないし・・・はぁ恋って恐ろしい・・・。

   明日は真のファイナルだから・・・寝不足で実力発揮できなかったら困るから寝よう・・・。

 

真のファイナルが始まる────

   夕方まできっちりと練習はした。

   後は練習どおりに演奏が出来れば大丈夫だ。

   最初は星奏学院からの演奏。

律は素晴らしいヴァイオリニストで今回は負けたくないが、相変わらず素晴らしい・・・それに第二ヴァイオリンの響也もいい・・・兄弟揃って神南高校のいいライバルになる・・・卒業してからも楽しみだな。

   次は俺達の番だと舞台袖に立っていると小日向がそっと近づいてきた。

「珍しいな?お前から近づくなんて」

「東金部長・・・」

   きゅっと腕にしがみついてきた。可愛ええ・・・緊張してるのかと顔を近づけて様子を伺うと小日向が背伸びをしてチュッと軽くキスをした。

「小日向!?」

「不意打ちです・・・嫌だった?」

「嫌なわけあるか・・・びっくりしただけや慣れたんか?」

「慣れたのかな?居直った?東金部長が甘えたりしても嫌じゃないなら二人きりの時は女の子でもいいかなって」

「あほ・・・当たり前や俺もお前といる時は関西弁の割合増えてきたし・・・好きな相手は特別なもんやろ?」

「うん。恥ずかしいけど・・・末永くよろしくお願いしますかな?」

「こちらこそよろしくや。行くで出番や」

   バッハ  2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043第一楽章

ソリスト級のヴァイオリン奏者2人が揃うコンサートではかなりの確率で取り上げられる作品だ。

   つまり俺と小日向は同格という事だ。選んだ小日向はやっぱり強気で生意気で可愛い。

   追いかけあう2つの独奏パート対比される独奏と全奏など、対位法的な書法が凝縮された、バッハの一つの頂点とも言える作品。

   演奏が始まる最初から追いかけあい競うように2つのヴァイオリンが奏であう・・・マエストロフィールドは2人同時に、俺は薔薇だ赤い薔薇が広がるその周りに金色の花びらが舞う曲自体も華やかなスピード感のある曲調なのでホール全体がキラキラと眩しいくらいに光る・・・二人同時にマエストロフィールドが具現化するなんて見た事も聞いた事もない。

   結果は神南高校の勝ちだろう。審査員もいないがな。

   その後の打ち上げでは如月兄弟、特に弟にネチネチと『お前らのエロエロマエストロフィールドどうにかしろ!』と言われ続けた。

   小日向は『 エロじゃないし!ラブだもん悔しかったら響也も律と一緒にすればいいし』と言い返し、付き合ってるのはもう全国的に知れ渡ったな。

   あの金色の花びらな・・・ハートだった気がするけど気にしないようにしよう。

   

   新学期が始まり、小日向は上手く巨大な猫を飼い慣らすようになったようだ。

   特定の人以外の前ではそつなく猫を使いこなしている。

   うちのクソ親父を転がしてるのには驚いた。  

   小日向に諭され如月律に謝罪に行く親父・・・俺が何を言っても聞かないのに、クソ親父の相手は小日向に任せよう。

   俺の前では猫を脱いでる。オンオフの切り替えができるようになりマエストロフィールドも安定しているようだし、曲調に合わせてマエストロフィールドが変わる奏者なんて俺は知らない。

   早晩、小日向は世界に知られヴァイオリニストとして活躍するだろう。本人にその気が無くとも周りが放っておかないし俺が上手く導くしな。

 

   今、小日向は俺の膝でゴロゴロしている。ソファの端に俺が座り小日向に膝枕してやってる状態だ。

「────んーっ疲れた~東金部長の膝、気持ちいい・・・」

「部長は部員に膝枕しないぜ」

「うっ・・・千秋さん?」

「かなで沖縄旅行いつにする?」

「・・・・・・やっぱり二人で旅行なんて恥ずかしいから」

   東金部長が旅行なんて目的が分かりすぎてて恥ずかしい・・・今はキスどまりだから次のステップに進みたいんだろうなと思う。でもまだ付き合って1ヶ月ちょっと・・・だし。

「ほら紅子が心配だし・・・」

   真っ赤になりながら言い訳を並べてみる。

「横浜にいる時はコンシェルジュが預かってくれてたんだよな?ペットホテル、植木のお世話まで完璧だよな・・・このマンション」

「うっ・・・どうしても?」

「どうしてもだ」

「二人で旅行なんて・・・そこまで進んでますーって公表してるみたいだから嫌だもん」

   最後にダメ押しで言ってみる。

「俺は公表したい最近のお前、モテすぎだからな彼氏ってアピールしたい」

「────もう恥ずかしい・・・今日、泊まればいいじゃない?金曜日だし」

「いいのか?」

「うん。どうせ土曜日、誰かさんの誕生日だしケーキ作る予定してたから・・・誕生日プレゼントも買ったし・・・その・・・お泊まりしたらって準備はしてたもん」

   ああ本当に恥ずかしい・・・自分から誘ってるみたい・・・恥ずかしすぎて死にそう・・・。

「かなで顔真っ赤だぜ?そういう意味だよな?」

「そういう意味だけど初心者だから・・・期待しちゃダメ」

「大丈夫、俺も初心者だ。予習はちゃんとしたし、着替えは鞄に入れてあるからな」

『千秋は調べだしたらとことん調べるタイプやから・・・』

   沖縄旅行の時に土岐が言ってた言葉が頭よぎる。

   何を予習したんだろう・・・何を実践されるだろう・・・

「着替えって確信犯じゃない?もう・・・恥ずかしい・・・私は予習してない・・・もん」

「予習したらお前逃げ出すだろ?しなくて正解だな」

 

   その日の夜、その言葉の意味を知った───

 


翌朝────

 


「大丈夫か?」 

   頭まで布団を被る私を心配する声が・・・でも昨晩は色々やめてくれなかったくせに・・・

   顔だけ出して返事をする。

「色々恥ずかしくてもう無理・・・ケーキ作る段取りが・・・千秋さんの誕生日なのに・・・うっ・・・」

  ポロリと涙がこぼれてしまう。

「なっ泣くな!その・・・女の方が大変らしいからケーキは今度でも」

「嫌・・・付き合って初めての彼氏の誕生日なのに・・・お祝いしたいのに」

   可愛ええ・・・そんなの気にしなくてもいいのに・・・かなでと一晩過ごせただけで俺は満足してるのに・・・痛かっただろうに、可愛くて可愛くてしょうがない。

   ケーキは俺が買いに行くからと説得した。

   朝食はパンとベーコンエッグを用意した。

    昼はランチに行こうと誘ったら・・・歩くのがちょっと・・・と言われて困った・・・のでコンシェルジュと相談しデリバリーサービスを頼んだ。

    夕方には回復したらしく晩御飯はかなでの手作りで・・・俺の好物ばかりが食卓に並んだ。ケーキは二人用に小さいのを買ってきた。

   二人でお祝いする。幸せだと思う・・・猫を脱いで二人きりの時は本当に女の子の小日向が多くなってきた。昨晩はすごく可愛かったし、今朝もお祝いしたいって泣かれて可愛すぎて困った。可愛い女の子の小日向は俺だけが知ってればいいと思う。

   付き合うようになって可愛さが滲み出るのか猫を被っている時でも小日向はモテだした・・・ヤバい・・・。

    旅行は断られたし・・・親父を焚き付けて婚約しようかな?こんな面白くて可愛い女二人とないからな・・・可愛い可愛い小日向・・・とりあえずマスコミに情報流して囲い込もう。

   誰にも渡さない・・・俺がこんな暗い感情を持ってるなんて知ったら嫌われるかな?知られるようなミスはしないがな。

   大学入ったら同棲する、俺も海外のコンクールに出て実績を残す。冥加に負けたくないし、小日向の隣に居るためには必要だ。

    俺は目的を決めたら計画を必ず遂行する、諦めない。女の為に世界を目指すなんて信じられないなと薄ら笑いを浮かべると心配そうに小日向が様子を伺っている。

「千秋さん?どうしたの」

「昨日のかなで可愛かった・・・今日はやっぱりダメか?」

「千秋さんの馬鹿・・・」

「そうか・・・」

   残念そうに伏せ目がちにすると小日向は大体の事は許してくれる。

「いいけど・・・二日も泊まってもいいの?」

「大丈夫や・・・今日は昨日より上手くできる自信あるしな」

「やっぱり千秋さんの馬鹿」

   照れくさそうに言う小日向に破顔してしまう。可愛い可愛い小日向・・・どんな手を使っても手放したりせえへんからな・・・。