ジャイアントペンギンの書庫

保管庫として活用、金色のコルダ3.4の東金千秋と小日向かなでの話しか置いてません·····あとは思いついた事をグダグダ書いてる今日この頃。

恋をしよう1

   最初から気になっていた。

   季節外れの転校生。

   昔のコンクール履歴、音源も手に入れた。

   あるコンクールからぱったり優勝から遠のき、ただの面白味のない演奏者になったやつ。

   写真も見たけど小柄で少女のような高校2年生。早熟な女子なら恋人もいるだろうが、色気は全くないまっさらな少女のような感じがした。

   今日、その転校生が来るらしいが正確な時間は分からないのでいつも通りに野外で練習を兼ねたライブの終了後にその転校生、小日向かなでが入部の挨拶に来た。

   うちの部は入部も厳しいのだが校長からのお墨付きでの入部希望なので断れない状況だった。入部してうちの部についてこれなければ辞めてもやむ無しと入部を許可した流れだ。

   最初に会った時に“地味子”と名付けた。お前みたいに空気みたいなやつは地味子だ!と。

   本心は違った、こいつは光る!磨けば光る原石だと思いコンクールのアンサンブルメンバーに大抜擢した。

   そして恥ずかしながら一目惚れした。生まれてこの方恋なんてしたことない。音楽より熱くなるなんてないなと思っていたし音楽よりのめり込むものは無かった。だからこそ音楽を身近に感じてもらいたいが為のライブ活動、ファンクラブの運営、ファンサービスもできるだけ応えてきた。

   その副産物で女子にモテるとか、遊んでるとか、ファンを食ってるとか不名誉な噂が付きまとっているが実際にはしてないし、神南高校の管弦楽部は体育会系だからファンに私的に会うのは厳禁。

   俺、蓬生、芹沢を利用してファンに会ったり合コンを企画した不届き者は即退部させた。

   小日向かなでと最初に会った時、息が止まるかと思った。

   小さく細身な身体。顔は小さく零れ落ちそうな大きな目は南洋の海の色のエメラルドグリーン、髪は俺とは違うくすんだ柔らかい金色。

   全体に覇気がないせいか地味に見えるが綺麗だ、好みだ。

   制服ベストのせいで胸のサイズは予測つかないが腰は細く足はスラリと長い。

   ニーハイが似合う・・・ニーハイを脱がしたい、生足はきっと白くてすべすべで柔らかいに違いない。白い肌を赤く染める姿を見てみたい・・・と一瞬しか見てないのにイケナイ想像をしてしまった、一目惚れって恐ろしいな。

   俺は自分が派手なせいか清楚で可愛らしいのが好きだ。

   周囲の女子やファンにはそんなタイプはいないし物語の中にしかそんな存在はなく、下手したら一生童貞かな?と思っていた。

   一目惚れだが、いきなり付き合えって言ったら逃げられるのは目に見えていた。

   その前にこの面白味の無くなった地味子の演奏をどうにかしないと・・・と思いしばらくは厳しい部長として接する覚悟を決めた。

   でも分かるやつには分かるらしく2、3日で蓬生にはバレてしまった。

   二人きりの部長室でいきなり話を振られ・・・

 「千秋、小日向ちゃん気に入っとうね?あれだけ可愛い素材やのに目立たないのは凄い才能やと思うわ・・・不思議な子やね?」

「────蓬生・・・好きなタイプか?」

   怒気がこもる・・・親友とライバルなんて困る、しかも地味子は蓬生の事を副部長では無く“蓬生さん”と呼び懐いている。

「くわばらくわばら怖いな千秋・・・ちゃうよ?あんな華奢な子壊してしまいそうで怖いわ・・・千秋が好きなん分かってるから手は出さへんし?でも千秋・・・いきなり襲ったらあかんで?」

   安心してソファに座り込み天井を仰ぎ見た。

「そーかー。よそいきやめて話すとなぁ・・・どうしたら分からんが正直な話や・・・あんな可愛い女初めて見た・・・肌白くて小さくて・・・脚が綺麗で腰細くて・・・目が頼りなげで・・・泣かせたいような・・・はぁーどうしたらええんや・・・まだろくに話もしてへんのに・・・ヤバい・・・とりあえずルックスは好み過ぎてヤバい・・・」

「おかしいわ、いつも俺様傲慢な千秋がなぁ?千秋は清楚で可愛いのが好きやもんな?」

「うるさい・・・なんで知ってるんや?」

「昔、千秋がハマってたライトノベルの主人公の恋人が小日向ちゃんに似とうもん。千秋ファンやったろ?千秋ってピュアやなぁって思って見てたからね」

「付き合いが長いって良し悪しやな・・・はぁ」

「俺は千秋の味方やで?千秋の初恋・・・ぷっ」

「蓬生・・・面白がるな」

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   東金が部長として指導する以外に話す手立てがなく悶々としていた頃に兄貴から呼び出しがあり嫌な予感がした俺はセーフハウス、叔父のアパートに避難するために歩いていた。

   ふと気配を感じると小日向が俺の後をついてきてるのに気付いた。

   しばらく気付かない振りをして歩く・・・がずっとついてくる気配に機嫌が悪かった俺は振り返り・・・

「ついてくるな!なんか用か?」

   と苛立ちながら小日向に怒鳴ってしまった。

   ビクッと怯えたような目をした後に困った顔をする小日向。

「帰る方角が一緒なんです・・・東金部長はいつも車で帰りますよね?だから私は私のマンションに帰宅するために歩いてるので・・・」

「そっ・・・そうなのか、いつも歩きなのか?」

「バス登校ですが歩いて30分くらいなのでバスの時間が合わない時は歩いたりします・・・尾行してるわけじゃないですから・・・でも帰りにスーパー寄りますからそこで分かれるので安心してください」

   ニッコリと笑う。いきなり怒ってしまった罪悪感がちくちくと俺の胸を刺す・・・うっ・・・ますます話しかけにくくなってしまった・・・。

   ずーんと落ち込みながら晩飯の為にラーメンともやしのカット野菜でも買って帰ろうとスーパーに入る。

   スーパーに入ると小日向とまた遭遇した小日向は、えっ!と小さく叫び驚いていた。

「東金部長・・・スーパーに寄ったらまた尾行してるみたいじゃないですか・・・さっき私、スーパーに寄るって言ったのに入っていくし・・・」

「悪い・・・俺もちょっと買い物があってな・・・すぐに出るから・・・ナス買うのか?」

「あっはい。特売だから・・・沢山あるから何に料理したら日持ちするかなぁって見てました」

「ナスのシギ焼き・・・美味いよな」

「美味しいですよね・・・」

   ふたりでナスを見つめてしまう。

小日向がナスを選び出した頃に俺はスーパーを後にした。

   小日向の手料理か・・・食べてみたいな・・・白いエプロン・・・似合うなとか思いながら歩いていると後に小日向の気配を感じた。また方向がいっしょなのか?!信号でしばらく小日向がちょこちょこと歩いて追いつくのを待った。

この辺に学生が下宿するようなアパートは駅近の一ヶ所しかない・・・

「小日向・・・俺はこの信号を右に曲がった先にボロアパートがあるだろ?そこに用があるんだが・・・まさかそのボロアパートに住んでるとかか?」

「ええ?そのアパートの隣に建った新築マンションが私の家です!」

   俺は観念したように小日向とふたりで歩き出した。

   歩きながら聞くと小日向はこの夏休み前に建った新築マンションに引っ越してきたらしい。スーパーから歩いて5分くらいだし駅も近いし便利ですよねとか話しながら歩く。転校してきたばかりだし、時期が夏休み前だった事もあり土日遊ぶ相手もいないけどアンサンブルメンバーに選ばれたから練習頑張りますね?とふんわりと笑う。

   健気だ・・・可愛すぎる・・・土日デートに誘いたい!

「そうだな・・・」

   心中は可愛さに悶え苦しみながら平静さを保ちつつ憮然と返事を返す、しばらく歩くとボロアパートに着いた。

「そこに友達いるんですか?」

「・・・内緒だぞ?叔父のアパートなんだ。家でヤバそうな時に逃げ込むセーフハウス・・・しばらく家出だな」

「ヤバそうな時・・・??」

「ああ・・・ご令嬢を紹介したいとか見合いまがいの話がある時はしばらく家出する事にしているんだ」

「はぁ・・・・・・大変ですね?大富豪のお坊ちゃんって・・・あっ!でもしばらくお隣さんですね?!」

────っお隣さん・・・いい響きだ・・・・・・しばらくどころか永遠に家出したい!!

「そうだな、よろしくな?」

   ぺこりと小日向が挨拶してマンションに入っていった。結構な高級マンションじゃないかな?また機会があったら聞こう、いや機会は作ろう!

   ボロアパートに帰宅後、しばらくぶりに訪れた部屋を掃除しラーメンを作り終わった頃にチャイムが鳴る。

このアパートを訪れるのは蓬生くらいだ。

「蓬生か?」

   扉を開けると小日向が立っていた。

「?こっ小日向?」

「ごめんなさい!いきなり来て・・・嫌ですよね?さっきの特売ナスで・・・ナスのシギ焼きたくさん作り過ぎたのでお裾分けです。おにぎりも作ったので!食べれなかったら朝ごはんにしてください!失礼します!」

   紙袋に入ったタッパーを押し付けて走り去って行った。カンカンカンとボロアパートの階段が鳴る。

   びっくりした・・・お裾分け・・・手料理・・・ヤバい顔が緩みっぱなしだ。

   少しのびたもやし炒めを乗っけたラーメン、ナスのシギ焼きとおにぎり2個で晩飯にした。美味い・・・こんな美味いナスのシギ焼きとおにぎりは初めてかもしれない。

   食べ終わった後に小日向に電話した。

ピルルルー

「はっはい!こっ小日向です!」

「びっくりしすぎだろ?」

「おっ怒ってます?」

「あほ・・・美味かった。で・・・そのな・・・」

「はい・・・?どうしました?」

「その部活用の連絡網アプリじゃなくて・・・個人的にその・・・アプリで連絡取っても・・・いいか?」

「えっ?構いませんよ?」

「そっそうか・・・帰りに遅い時に送ったり出来るだろ?」

「あっありがとうございます・・・東金部長って厳しいけど優しいですよね・・・」

「一人暮らしだしな・・・じゃまた明日、部活でな」

────プチッ

   緊張した・・・よし!これで個人的に連絡取れる!

   翌日に蓬生、芹沢も個人的にアプリ連絡取っていた事を知って落ち込む東金だった。✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱